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3・放っておけない人…… Page9

ผู้เขียน: 日暮ミミ♪
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-03-06 12:38:33

 ――今日一緒に飲んでみて分かったけど、原口さんは酔うとやたら饒舌(じょうぜつ)になるみたい。普段は口数の少ない人なのに。

「……ねえ原口さん。あなたって完全に酔い潰(つぶ)れちゃうとどうなるんですか?」

「う~んと……。僕は全く覚えてないんですけど、どうも〝素(す)〟が出ちゃうらしいです」

「〝素〟……って」

 一体どんな状態? って訊いてみたいけれど、本人が覚えていないんじゃ訊いても仕方ないか……。まあ、だいぶ酔いが回ってきているみたいだし、この後イヤでも分かるだろうけれど。

「――そういや、先生の元カレさんはどうだったんですか? 先生の酒豪っぷり見て引いてました?」

「え……」

 どうして今更(いまさら)、潤(アイツ)のことなんか訊くんだろう? 私にとってはもうキレイさっぱり過去のことなのに。

 でもきっと、彼は酔いが醒(さ)めたら訊いたことさえ忘れるんだろう。――そう思うから、私は答えてあげることにした。

「アイツは引いてなかったかなあ。あなたと一緒で下戸だったから、『お前の方が男らしいよな』って笑ってましたね」

 潤も基本的にはいいヤツだった。私もアイツのことが好きだったから付き合っていられたのに……。

「井上さんとは僕も面識ありますけど。あの頃は先生といい感じに見えたのに、どうして別れちゃったんですか?」

 私は答えに詰(つ)まる。――どう答えたらいいんだろう?

 というか、いつかは誰かに訊(き)かれるだろうと思っていたけれど。まさか、自分が想いを寄せている相手ご本人から(酔った勢いとはいえ)正面切って訊(たず)ねられるとは思ってもみなかった。

「えーっと……、簡単に言えば〝すれ違い〟……になるのかなあ」

 ひとまずそう答えてから、私と潤が別れることになるまでの経緯(いきさつ)を整理していった。

「潤とは大学に入ったばかりの頃、アイツの方から告(コク)られて付き合い始めたんです。私も次第(しだい)にアイツのこと好きになっていって、二人はけっこういい関係を続けていってたと思います。――私の小説家デビューが決まるまでは」

「……というと?」

 原口さんが首を傾げる。

 私とアイツが別れた原因は、彼には理解できないだろう、実に下らないことだった。
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  • シャープペンシルより愛をこめて。   3・放っておけない人…… Page10

    「私は彼のこと好きだったし、夢も叶(かな)ったばっかりだったから、どっちも大事にしたかったんです。でも、彼は違ってました。『作家の仕事かオレか、どっちか選べ』って」「そんな……! 井上さんも知ってたはずじゃないですか。先生が本気で作家を目指してたこと」 原口さんも私の話を聞いて憤慨(ふんがい)している。「それって、『作家を続けるなら自分と別れろ』、『自分と付き合い続けたいなら作家を辞(や)めろ』ってことでしょう!? 勝手すぎるでしょう、そんなの!」 どうして原口さんがこんなに怒っているのかは分からないけれど、当時の私は怒(いか)りとは別の感情を抱いた。「原口さん、あなたがそんなに興奮(こうふん)しなくても。――でもね、私は怒りを通り越してなんか悲しくなっちゃって。散々(さんざん)泣いた後、『なんでこんな勝手なヤツに縋(すが)りつかなきゃいけないの?』って思ったら、自然とどっちを選ぶか決まりました」「……で、別れたと。でも、それでよかったと思いますよ。そんな自己中(ジコチュー)なオトコ、さっさと切り捨てて正解ですわ、ホンマに!」 相当酔いが回ってきたらしい彼は、やたら熱弁し始めた。……けど、あれ? イントネーションがおかしい。というか関西弁?「……ときに原口さん。出身はどこでしたっけ?」「僕は兵庫(ひょうご)の出身ですよ。っていっても、神戸(こうべ)みたいな都会じゃなくて。有名な漫画家の先生の記念館くらいしか名物がないところですけどね」「へえ……」「大学入学と同時に上京して来たんで、もう十年になりますかね」 ――それからは、彼の身の上話を延々(えんえん)と聞かされた。とはいえ、私も知りたいと思っていたことだったので、全然迷惑(めいわく)じゃなかったけれど。 彼は上京してからずっと、「関西弁は東京ではバカにされる」と思い込み、なるべく標準語で話すようにしてきたらしい。 でも、幼(おさな)いころに一度身についたネイティブな話し方というものは何の拍子(ひょうし)に出てくるか分からないので(たとえば今日みたいに酔い潰れた時とか)、最近はもう関西弁は出るに任せているのだとか。「――どうです、先生? 僕って実はこんな人間なんですけど、引きますか?」 原口さんはさっきから、関西弁を封印して必死に標準語で話そうとしている。イントネーションは関西寄りだ

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-06
  • シャープペンシルより愛をこめて。   3・放っておけない人…… Page11

    「――あっ! 『好き』っていうのはそういう意味じゃなくてっ! 嫌いか好きかでいうところの『好き』っていう意味でっ!」「ああ、なんだ。そういう意味ですか……。ビックリしましたよー」 〝ビックリした〟とか関西寄りのイントネーションで(それはもういいか)言うわりには、少なからずショックを受けている様子の原口さん。……ちょっと待って! ショックを受けたってことは、さっきの「好き」を私からの告白と解釈したかもしれないってこと!? ああ、否定しない方がよかったのかなあ。――いやいや! そんなことないよね。 酔い潰れてる時にされた告白なんて、酔いから醒めれば忘れられてしまうから。記憶に残らない告白なんて、しても惨(みじ)めなだけだ。告白するなら彼が素面(シラフ)の時に、ちゃんと記憶に残る形でしなきゃ意味がない。 ――そういえばさっきから、話が脱線しまくっている気がする。「……えーっと、話戻しますけど。私ね、潤とのことがあってから、『現実の恋愛って面倒だなー』って思い始めたんです。小説っていいよなーって。だって、紙の上にどんな恋愛を書いたって誰にも迷惑かけないから」 決して現実逃避(とうひ)をしたくて小説を書いているわけじゃないけれど……。「じゃあ今、先生は現実で好きな人いないんですか? べっぴんさんやのに勿体(もったい)ない」 ……原口さんよ、どうしてそこでまた関西弁になる? ――あーあ、こりゃ相当潰れてきてるな。 というか、「べっぴんさん」なんて……。同性の琴音先生に言われた時は照れ臭いだけだったけれど、やっぱり好きな人に言われると嬉しいな。たとえ酔った勢いで、明日になって彼が覚えていなかったとしても。「そんな、べっぴんさんさんなんて! ……えっと、恋愛っていうか好きな人はいますよ。多分まだ片想いですけど」 それがあなたです、とは言わないけれど。私は正直に答えた。「そうですか」 原口さんはそれだけしか言わなかった。 ……まあ、こんな状態になった彼が何を思い、私の言葉をどう捉(とら)えたかなんて分かるはずもないのだけれど――。「はい、そうです」 ねえ、原口さん。今度この言葉を伝える時は、こんな遠回しな言い方じゃなくてもっとハッキリ分かりやすく伝えるから。心の準備をしておいてね。――そういう意味を込めた眼差(まなざ)しを彼に送り、私は頷き返した。

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-06
  • シャープペンシルより愛をこめて。   3・放っておけない人…… Page12

    「――っていうか、原口さん。あなた、夕方に来た時よりスッキリした表情(かお)してますよ」「えっ、そうですか? 先生が話聞いて下さったおかげさんですね。ありがとうございます」「いえいえ! 私は何も!」 むしろ出すぎたマネをしようとしたんですけど。これで感謝されていいんですか、私? ――何はともあれ、お酒ですっかりでき上っちゃってるとはいえ、原口さんが上機嫌(きげん)になってくれて、私はホッとした。   * * * * ――テーブルの上のおつまみも乾(かわ)きものだけになり、六本あった徳用缶チューハイも残り二本になった頃。時刻は夜の九時半過ぎ。「原口さん! そんな酔い潰れちゃって大丈夫なんですか!? ちゃんと帰れますか!?」 彼はアルコールに相当弱いらしい。三時間以上も飲み続けていたら、もうベロンベロンになってしまっていた。下戸だとは聞いていたけれど、こんなに前後不覚(ふかく)になるまで酔っ払ってしまうとは!「はぁ~い、俺はダイジョ~ブです~。ぜ~ん然酔っ払ってなんかいまへ~んよ~~」「……ダメだこりゃ」 完全に酔っ払いですがな。呂律回ってないわ、関西弁になってるわ。 とどのつまりは、一人称が「俺」。――彼が「俺」って言うのは怒っている時だと思っていたけれど、「酔うと〝素〟が出る」って聞いたからやっぱりこっちが彼の素なんだろう。……それはともかく。「原口さん、全然大丈夫じゃないじゃないですか! 電車通勤でしょ!? 駅に着くまでに事故にでも遭(あ)われたら私が困るんで!」 このまま寝てしまったら、彼はどちらにせよ今日は帰れなくなってしまう。終電は確実に逃(のが)すだろうし、タクシーに乗っても行き先をちゃんと運転手さんに伝えられるかどうか怪しいところだ。 ……と引き止めてみたところで、どうしたものか? 考え抜いた末(すえ)に出た答えは一つしかなかった。それはあまりにも大胆な提案だったのだけれど。「原口さん、今夜はウチに泊まっていって下さい」「…………へっ? なんですってぇぇぇ!?」 一瞬キョトンとした後、原口さんが思いっきり取り乱した。彼の酔いは、さっきの私の発言で少し醒めたことだろう。……多分。 私は別に、男の人をこの部屋に泊めることには何の抵抗(ていこう)もないのだけれど。彼にとってはそのこと自体が衝撃(しょうげき)的だったのだろう

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-06
  • シャープペンシルより愛をこめて。   3・放っておけない人…… Page13

    「そそそ、そんな! 独身女性の部屋に男が泊まるやなんてとんでもないっ! 何か間違いがあったらどうするんですか!?」 彼は大まじめに抗議するけれど。酔い潰れた状態で言われても説得力は半分以下だ。「間違いって?」「いや、だからそそその……何や。俺が先生の寝込み襲(おそ)ったりとか、アレするとか」 〝アレする〟とはつまり、一線を越えてしまうことを言いたいらしい。「先生はそれでもええんですか!?」「それは……えっと」 私にそういう願望がないのかと訊かれれば答えは「ノー」なのだけれど。――まあ、相手は自分の想い人だし? でも、今この段階で、酔いで我を忘れている原口さんを相手にそれはない。「……って、それどころじゃないでしょ!? 今晩『泊まって』言ったのは、ただの親切心からだけですから! 下心(したごころ)なんてないですからね!?」 ……そう。ただ単に、この酔っ払いと化(か)した彼を放っておけないだけ。決して、彼が前後不覚なのをいいことに誘惑してしまおうなんて気は、私にはさらさらないのだ。「……ホンマですかぁ? それ」「ホントですってば!」 ジト目でしつこく訊かれ、私はムキになって答える。……いつもの私と原口さんとのやり取り。アルコールが入っているせいか、ヘンに意識しすぎることなく自然に接することができている。――それにしても、私はさっきまでの彼の取り乱しっぷりが気になる。「泊まっていって」と言っただけなのに、あの慌てようは……。どうも女性経験がないわけではなさそうだけれど。 だって、彼はイケメンだし長身だし(身長百五十センチ台半ばの私より二十センチは高いはず)、昔は彼女もいたらしいから、今だって女性が放っておかないと思う。 酔い潰れると前後不覚になるところなんかは手がかかるというか、母性本能をくすぐられるというか。そういうところも放っておけないし。 ……ただ、彼にはSっ気があるから、女性が彼の扱いに困るかもしれないとも思う。 できれば、原口さんが今フリーでありますように。そして――、琴音先生とも何もありませんように! 琴音先生(あの人)がライバルだったら、私はきっと敵(かな)わないから――。

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   4・縮まる距離、そして元カレとの再会 Page1

     ――何はともあれ、私は原口さんを今晩一晩だけ、私のマンションに泊めてあげることにした。とはいえ、ここは単身向けの物件。私が仕事部屋(兼寝室)として使っている部屋以外に、「部屋」と呼べる場所はない。「えーっと、寝る場所はどうしましょう? 私の部屋かリビングのソファーしかないんですけど……」 できることなら、ソファーはあまりお勧(すす)めしたくない。ウチのソファーはなかなか寝(ね)心地(ごこち)が悪い。私も何度かここで寝る羽目(はめ)になったことがあるからよく知っているけれど。朝起きた時、必ずと言っていいほど首が痛くなっているのだ。「私の部屋で寝ます? 床(ゆか)にお布団(ふとん)敷いて」 確か、納戸(なんど)に予備の布団が一組あったはずだ。ソファーよりはいくらかマシだと思う。「ええ~、床ですか……?」「床がイヤなら、ソファーか私のベッドで一緒に寝てもらうことになりますけど?」 不服そうな(……なのかどうかは定かじゃないけど)原口さんに、私はイタズラっぽく言ってみた。「い……っ、いやいやいや! ダメですよ、そんなん! 一緒の部屋で寝るだけでもダメですって!」 原口さんの顔がさっきより真っ赤になる。関西弁が抜けていないところを見るに、まだ酔っているには違いないだろうけど。これはどうもそれだけじゃないように見える。 ……もしかして照れてるの? そうだとしたら、ちょっと可愛いかも。「僕はソファーで寝ますから! 一緒の部屋で寝るのだけはカンベンして下さいよー」 そんなに拝(おが)み倒すほど、私と同じ部屋で寝るのが苦痛なの? 冗談(じょうだん)で言っただけなのにちょっと傷付く。「……分かりました。冗談ですって。――じゃあ、納戸から毛布か何か持ってきます。クッションを枕代わりにしてもらえば」「何から何まで、ホンマにすんません。一晩お世話んなります」「いいええ」 私は謝り倒す原口さんにニッコリ笑顔で応じ、彼がソファーで寝るための準備にとりかかった。酔っ払いを外に放り出すほど私は鬼(オニ)じゃない。ましてや、好きな人ならなおさら。 ――準備が整(ととの)うと、彼はジャケット脱いでゴロンとソファーに横になった。「じゃ、明(あ)かり消しますね。原口さん、おやすみなさい」「ふぁ~い……」 窮屈そうに背中を丸め(そうしないと、長身の彼は足がはみ出して

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-06
  • シャープペンシルより愛をこめて。   4・縮まる距離、そして元カレとの再会 Page2

     クローゼットから着替えとバスタオルを出して、眠っている原口さんを起こさないようにリビングを横切り、バスルームに向かう。一応脱衣スペースもあるし、スライドドアで隔(へだ)てられてはいるけれど。男性(それも彼氏じゃないけど好きな人)がそのドアの向こうで寝ている中で裸になるのはちょっと勇気がいる。 ――ほんの少しだけ抵抗を感じながらも服を脱ぎ、シャワーを浴びてサッパリしてから部屋着を着て、髪をドライヤーで乾(かわ)かして部屋に戻る。 でもベッドには入らず、向かったのは仕事スペースの机。……の上にある、白いノートパソコン。 以前、原口さんに話した〝バイトのためのパソコンの練習〟は、今や毎晩の日課になっている。本業である執筆の仕事がない時はもちろんだけど、本業の合間にも少しずつだけでも続けている。 Word(ワード)を起動させ、指をポキポキ鳴らしてからキーボードを叩き始めた。右手一本でならどうにできるようになったタイピングだけれど、左手の指まで動かそうとすると、どうにも思うように動いてくれなくて困る。 そして、キーボードと格闘(かくとう)すること約一時間ほど――。「あ~もう! また指つった! どうしてここで指もつれるかなぁ!? あ、そこ違う!」 変換を間違えたり、別のキーを押してしまったりして、一人でボヤき続けていると。「――先生? パソコンの特訓してたんですか?」「はい、……ってうわっ! 原口さんっ、いつの間に!?」 後ろから声がして、振り返った私は思わず飛び上がりそうになった。「えーっと、十分くらい前から? あまりにも真剣(しんけん)そうだったんで、おジャマしちゃ悪いかな、と思って声かけなかったんです」 ……十分前!? ということは、私のボヤきを全部聞かれていたってことだ……。「ゴメンなさい。私のボヤき、うるさくて目覚(さ)めちゃいました? それとも部屋の照明が眩(まぶ)しかったとか?」 彼が目を覚ました理由がそのどちらかだったら、どちらにしても私のせいだ。……けれど。「いえ、先生のせいじゃないです。たまたま喉(のど)が渇(かわ)いて目が覚めただけですから」「……あー、そうなんですね」 そりゃ、下戸なのにあれだけアルコールを摂(と)ったら喉も渇くでしょうよ。「それじゃ、何か飲み物淹(い)れてきますから。リビングで待ってて下さい」 

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   4・縮まる距離、そして元カレとの再会 Page3

    「――はい、どうぞ」「ああ、すみません。頂きます」 グラスを受け取った原口さんは、よっぽど喉が渇いていたのか、一気にグビグビと半分くらい飲んでしまった。「――そういえば先生。僕、酔っ払ってる間の記憶がほとんどないんですけど。先生に何か失礼なこと言ってませんでした?」 一度グラスを置いた彼は、決まり悪そうに私に訊ねる。彼にしてみれば、記憶がなくなるほど酔ってしまったこと自体、私に対して失礼だと思っているんだろう。「いえ、失礼なことなんて何も……。ただ、バリバリ関西弁にはなってましたけど」 私はそう答えてから、フフフッと笑った。 そして失礼ではない(むしろ私は嬉しい)けど、彼は私のことを「べっぴんさん」とも言ってくれた。でも本人は覚えていないようなので、これは私の胸の内だけに収(おさ)めておこう。「そうですか……。またやっちまった……」 はぁ~っとため息をつき、原口さんはガックリとうなだれた。余談(よだん)だけれど、彼の関西弁はすっかり抜けて標準語に戻っている。もうすっかり酔いは醒めているらしい。「先生も、引きました? 僕の関西弁」「引きません。ってさっきも言いました」「……はあ」 彼はそれも覚えていないらしい。「ねえ原口さん。酔い始めてからどのあたりまで覚えてますか?」 原口さんは小首を傾げ、必死に自分の記憶を辿り始めた。「えーーっと……、確か、先生と井上さんがどうして別れたのかというあたりまでは」「はあ、そうですか……。なるほどね」 私は納得(なっとく)した。私の記憶でも、確か彼はその話の途中から関西弁になっていたように思うから。 じゃあ、その後に私が「原口さんの関西弁は好き」って言ったことも、彼は覚えていないのか……。――私も麦茶に口をつけた。「私ね、その時に言ったんですよ。『原口さんの関西弁は引かない。むしろ好きだ』って。――覚えてないならいいです」 誤解のないように、〝好き〟は嫌いか好きかの〝好き〟だと補足することも忘れない。「そういう意味の〝好き〟だったら、僕にもありますよ」「……え?」 原口さん、それはどういう意味? ――私は彼の次の言葉を待った。「先生が直筆で書かれる小説、僕は大好きなんです。編集者の役得(やくとく)ですよね、これって」「ああー……」 そっちか。そっちね。――私はちょっとだけ肩を落と

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   4・縮まる距離、そして元カレとの再会 Page4

    「内容はもちろんですけど、先生の原稿そのものから勢いというか、パワーみたいなものを感じるんです。『書くのが楽しい!』っていうのがガツンと伝わってくる」「へぇー、そうですか……。それはどうも」 彼の熱弁には若干(じゃっかん)引いたけど、正直私は嬉しかった。私の小説を一番愛してくれているのは原口さん。――それが本当だったんだと分かったから。 たとえ私自身のことを「好き」って言ってくれたんじゃなくても、好きな人の口からその言葉が出ただけで嬉しいやら照れ臭いやらでなんかむず痒(がゆ)い。「でも、パソコンの練習してるってあれ、本当だったんですね」「はい。……って、信じてなかったの!?」 私は思わず飲んでいた麦茶を噴(ふ)きそうになった。敬語も抜けちゃったけど、今はそれどころじゃない!「信じてましたけど。執筆のためにじゃないなら、僕はタッチすべきじゃないかと思ったんで」「…………」 これを優しさと取るか、冷たく突き放(はな)されたと取るか。私は反応に困った。「編集者としてはやっぱり、うるさく言うべきなんでしょうね。作家の将来のためだ、って。――でも、僕個人としては、先生には今のままでいてほしいんです」 今のまま。――背伸びせず、ムリをしないで、ってことなのかな?「だから、アルバイトのためにパソコンの練習をしてると聞いて、先生がムリなさってるんじゃないかと思って心配だったんです」「〝心配〟って……。でも、私にとっては必要なことなんです」 私はつい、原口さんにグチっていた。「私、まだパソコンに慣れてないからバイト先でいつも周りの人に迷惑かけてるんです。今日だって、お客様にお時間取らせちゃったし」「そうですか……。それで今日、ちょっと元気がなかったんですね」「えっ、気づいてたんですか?」 私は心底(しんそこ)驚(おどろ)いた。――この人、私のことをよく見てるなあ。まだ二年ちょっとの付き合いなのに、私のほんの些細(ささい)な変化も見逃(のが)さないなんて……。「はい。先生ほど表情がコロコロ変わる人はいませんから」「ああ……、そういうことか」 やっぱり私って分かりやすいらしい。 ちなみに今、このリビングはナツメ球の灯りだけで薄暗(うすぐら)いので、きっと彼には見えていない。一緒に麦茶を飲んでいるこの十数分間にもコロコロ変化していた私の表情が。

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-06

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page17

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page16

    「バレました? 実はそうなんです。僕ももっと早く先生にお話しするつもりだったんですけど、先生が喜ばれるかどうか心配で。僕よりも映画のプロの口から伝えていただいた方が説得力があるかな……と」「はあ、なるほど」 私も自分が書いた作品の出来(でき)には自信があるけれど、「映画化するに値(あたい)するかどうか」の判断は難しい。そこはやっぱり、プロが判断して然(しか)るべきだと思うのだ。「僕は先生がお書きになった原作の小説を読んで、『この作品をぜひ映像化したい!』と強く思いました。それも、アニメーションではなく、生身(なまみ)の俳優が動く実写の映画にしたい、と。それくらいに素晴らしい小説です」「いえいえ、そんな……。ありがとうございます」 私は照れてしまって、それだけしか言えなかった。自分の書いた小説をここまで熱を込めて褒めてもらえるなんて、なんだかちょっとくすぐったい気持ちになる。それも、初対面の男性からなんて……。「――あの、近石さん。メガホンは誰がとられるんですか?」 どうせ撮ってもらうなら、この作品によりよい解釈をしてくれる監督さんにお願いしたい。「監督は、柴崎(しばさき)新太(あらた)監督にお願いしました。えー……、スタッフリストは……あった! こちらです」 近石さんが企画書をめくり、スタッフリストのページを開いて見せて下さった。「柴崎監督って、〝恋愛映画のカリスマ〟って呼ばれてる、あの柴崎監督ですか!?」 私が驚くのもムリはない。私と原口さんは数日前に、私の部屋で彼がメガホンをとった映画のDVDを観たばかりだったのだから。「わ……、ホントだ。すごく嬉しいです! こんなスゴい監督さんに撮って頂けるなんて!」「実は、主役の男女の配役ももう決まってまして。あの二人を演じてもらうなら、彼らしかいないと僕が思う演者(えんじゃ)さんをキャスティングさせて頂きました」 近石プロデューサーはそう言って、今度は出演者のリストのページを開いた。「えっ? ウソ……」 そこに載っているキャストの名前を見て、私は思わず声に出して呟いていた。「……あれ? 先生、お気に召しませんか?」「いえ、その逆です。『演じてもらうなら、この人たちがいいな』って私が想像してた通りの人達だったんで、ビックリしちゃって。まさにイメージにピッタリのキャスティングです」 こん

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page15

    「いえ、僕もつい今しがた来たところですから」「あ……、そうでしたか」 TVでもよく見かけるイケメンさんに爽やかにそう返され、私はすっかり拍子抜け。――彼が敏腕(びんわん)映画プロデューサー・近石祐司さんだ。「先生、とりあえず冷たいお茶でも飲んで、落ち着いて下さい」「……ありがとうございます」 原口さんが気を利かせて、まだ口をつけていなかったらしい彼自身のグラスを私に差し出す。……私は別に、彼が口をつけていても問題なかったのだけれど。 ……それはさておき。私がソファーに腰を下ろし、お茶を飲んだところで、原口さんがお客様に私のことを紹介してくれた。「――近石さん。紹介が遅れました。こちらの女性が『君に降る雪』の原作者の、巻田ナミ先生です。――巻田先生、こちらはお電話でもお話しした、映画プロデューサーの近石祐司さんです」「巻田先生、初めまして。近石です」「初めまして。巻田ナミです。近石さんのお姿は、TVや雑誌でよく拝見してます。お会いできて光栄です」 私は近石さんから名刺を頂いた。私の名刺はない。原口さんはもう既に、彼と名刺交換を済ませているようだった。「――ところで原口さん、さっき『君に降る雪』って言ってましたよね? あの小説を映画化してもらえるってことですか?」 その問いに答えたのは、原口さんではなく近石さんの方だった。「はい、その通りです。

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page14

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page13

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page12

     ――数日後。今日のバイトは久々に由佳ちゃんと一緒のシフトになった。 新作の原稿も順調に進んでいるし、原口さんとの関係も良好。ここ最近の私は公私(こうし)共(とも)に充実している感じだ。「――客足も落ち着いてきたね。二人とも、お昼休憩に行っておいで」 正午を三十分ほど過ぎた頃、清塚店長が私達アルバイト組に休憩をとるように言ってくれた。「「はい。行ってきます」」 休憩室の机の上にお弁当を広げ、由佳ちゃんとガールズトークをしながらのランチ。この日も当然、そうなるはずだった。……途中までは。「――そういえば、最近どうなの? 五つ上の編集者さんの彼氏とは」 由佳ちゃんは最近、私の恋愛バナシにご執心(しゅうしん)みたいだ。「うん、順調だよ。――由佳ちゃんの方は?」 私はお弁当箱の中の玉子焼きをお箸でつまみながら答え、今度は私から由佳ちゃんに水を向けた。「うん……。彼とはねえ、最近連絡取ってないの」「えっ? ケンカでもしたの?」 少し前まで幸せそうだったのに。予想外の答えに私は目を丸くした。「ううん、そうじゃないんだけどね。彼、最近忙しいみたいで……」 由佳ちゃんの彼氏は中学校の教師で、私の予想では多分三年生を受け持っている。「そっか……。でも、中学校の先生だったら今ごろはきっと、ホントに忙しいんだろうね。文化祭の準備とかテストとかで」 私はさり気なくフォローを入れる。それに、三年生の担任だったりしたらきっと、生徒の進路の相談に乗ったりもしているんだろうから、さらに忙しいだろうし。「少し時間が空いたら、彼からまた連絡くれると思うよ。だから、彼のこと信じて待つしかないんじゃない?」「……そうだね。あたし、彼のこと信じる」 さっきまでちょっと元気のなかった由佳ちゃんは、食べかけでやめていたコンビニのエビマヨのおにぎりをまたモグモグし始めた。「――にしても、奈美ちゃんはいいなあ。仕事でも私生活(プライベート)でも、大好きな人と一緒なんでしょ? 『離れたらどうしよう?』なんて心配はなさそうだし」 冷たい緑茶でおにぎりを飲み下した由佳ちゃんが、羨ましそうに私に言った。「うん……、まあね。逆に言えば、プライバシーもへったくれもないってことになるんだけど。別に私は困んないし」 むしろ四六時中(しろくじちゅう)彼と一緒にいられて幸せだから、私はそ

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page11

       * * * * ――翌朝、原口さんはバイトに出勤する私に合わせてわざわざ早く起きてくれたので、一緒に朝ゴハンを食べた。今日のメニューは白いゴハンに焼き鮭(ざけ)、キュウリとナスの浅漬け、そしてきのことカボチャのお味噌汁。秋が旬の食材をふんだんに使ったメニューだ。 たまには洋食の朝ゴハンにしようかとも思うのだけれど、原口さんは和の朝食がお好みらしい。「――そういえば、ナミ先生って和食以外もよく作るんですか?」 ゴハンをお代わりしながら、彼が訊いた。……あ。そういえば彼がウチで食べる料理ってほとんど和食だ。洋食系のメニューって食べてもらったことあったっけ?「うん、作りますよ。中華とかカレーとかも。でも、さすがにハヤシライスは作ったことないなあ」 昨日のデートで、彼と一緒にカフェで食べたハヤシライスはおいしかった。……でも、自分で「作ってみたい」とまでは思わない。私は創作の面では結構攻めるタイプだと思うけれど、どうも他の面では守りに徹(てっ)するタイプみたいだ。 そういえば恋愛でもそうだった。原口さんのことが好きだと気づいた時だって、自分からはグイグイ行かなかった……と思うし。「――僕、ナミ先生が作ってくれる和食大好きなんですけど。たまには洋食系のメニューも食べてみたいなあ……なんて。……すみませ

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page10

       * * * * ――結局、彼はやっぱり泊っていくことになった。 洗い物を済ませてから二人で交代に入浴し、寝室で甘~~い時間を過ごしたら、私は無性に書きたい衝動(しょうどう)にかきたてられた。「――ゴメンなさい、原口さん。私、これからちょっと仕事したいんですけど。机の灯りつけてても寝られますか?」 私が起き上がると、彼は「仕事って、執筆ですか?」と訊き返してくる。「そうです。眩しいようだったら、ダイニングで書きますけど」「いえ、僕のことはお気になさらず。……ただ、明日出勤でしょ? あんまり遅くまでやらないようにして下さいね」「うん、ありがとうございます。キリのいいところまでやったら、適当に寝ます。だから気にせず、先に寝てて下さい」 私はベッドから抜け出して、部屋着の長袖Tシャツの上からパーカーを羽織り、机に向かった。書きかけの原稿用紙を机の上に広げ、シャープペンシルを握る。 ノートパソコンは、相変わらずネットでしか稼働(かどう)していない。タイピングの練習は、時間が空いた時だけやっている。でも、パソコンで執筆する気にはやっぱりなれない。 原稿を書きながら、数時間前に観た映画のラブシーンとついさっきまでの彼との濃密(のうみつ)な時間を思い出しては、一人で赤面していた。私が書いている恋愛小説は濃厚(のうこう)なラブシーンが登場するようなものじゃなく、主にピュアな恋愛を描いているものがほとんどなのだけれど。 私の恋は、小説やTVドラマや歌の世界を地(じ)でいっている気がする。 潤のことも、もちろん本気で好きだった。だから、「小説家なんかやめろ」って言われてすごく傷付いたんだと思う。「どうして好きな人に応援してもらえないの?」って。 でも、原口さん相手ほどは燃えなかったなあ。こんなにどっぷり好きになった相手は、多分彼が初めてだ。そして、ここまで愛されているのも。 だって彼は、私のことを丸ごと愛してくれているから。私のダメなところも全部認めてくれて、決して貶さないし。……こんなに出来た彼氏は他にいないと思う。 ――集中してシャーペンを走らせ、原稿用紙十五枚を一気に書き上げると、時刻は夜中の十二時過ぎ。いつの間にか日付が変わっていた。「ん~~っ、疲れたあ! そろそろ寝よ……」 私はシャーペンを置き、思いっきり伸びをした。ふと、後ろのベッド

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page9

    「――さて、と。まだ時間も早いですけど、DVDでも観ます?」 私はソファーから立ち上がると、ミモレ丈(たけ)のデニムスカートの裾を揺らしてTVラックの所まで行き、彼に訊ねる。 今日は映画を観てきたけれど、この部屋の中での時間の潰し方は限られる。TVを観るか、DVDを観るか、仕事するか。それとも…………。「いいですけど。ちなみに、どんなジャンルですか?」「ワンパターンで申し訳ないんですけど、恋愛映画……。洋画と邦画、どっちもありますけど」 これでも恋愛小説家である。他の作家さんの恋愛小説だけでなく、時にはコミックやTVドラマ・映画などを作品の参考にすることもあるのだ。そういう意味で、恋愛映画のDVDは資料としてこの部屋には豊富に揃(そろ)っている。「じゃあ……、邦画の方で」「了解(ラジャー)☆」 私が選んだのは、〝恋愛映画のカリスマ〟と名高い若手映画監督がメガホンをとった映画。今日観て来た映画とは違う、ドラマチックな演出をすることで有名な人の作品だ。 ――でも見始めてから、この作品を選んだことを後悔した。「「わ…………」」 途中で際(きわ)どいラブシーンが流れて、何となく気まずい空気になったのは言うまでもない。 あまりにも生々しすぎるラブシーンを直視できず、TV画面から視線を逸らしてチラッと隣りを見遣れば、原口さんは瞬(まばた)きひとつせずに画面に釘付けになっていた。 ……目、大丈夫かな? ドライアイにならない? 私は彼の顔の前に手をかざして上下に動かしてみる。「お~い、起きてますかぁ?」「…………ぅわっ!? ビックリした!」 ハッと我に返った彼のガチのビックリ顔がおかしくて、私は思わず吹き出した。「ハハハ……っ! めっちゃ見入ってましたねー」「スミマセン」 お家デート中に彼女の存在そっちのけで映画に見入っちゃうなんて、なんて彼氏だ。……まあでも、面白いものが見られたからよしとしよう。「――あ、終わった。ちょっと刺激強すぎたかな……」 映画は二時間足らずで終わった。プレイヤーから出したディスクをケースに戻し、次に観る時はもう少し刺激の少ない映画にしようと思った。「お風呂のお湯、入れてこようっと。――先に入りますか?」 この調子だと、今日も彼はこの部屋に泊まっていくことになりそうなので、私はバスルームに向かいがてら彼に訊ね

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